小説「夜行」を読んだ感想

私は森見登美彦の小説「夜行」を読みました。新聞にある話題の書籍を紹介するコーナーでこの本が紹介されていたので、読んでみたいと思い購入しました。

 主人公の男性は英会話スクールの仲間4人と一緒に鞍馬の火祭に出掛けます。彼らと京都で合流したときに、主人公も彼らも昔のことを思い出していました。実は十年前、その仲間のもう一人の女性が鞍馬の火祭の夜に行方不明になってしまったのです。主人公はその仲間と合流する前に、行方不明になったと思しき女性が画廊に入っていくのを見ました。しかし、その女性はいませんでした。その画廊に飾られていたのは連作の銅版画で、不思議な感覚にとらわれるようなものでした。目的の宿に着くと、主人公は画廊でその女性を見たこと、そして連作の銅版画の話をしました。そうすると、仲間もその銅版画のことを知っているようで、それが関係している旅行記を一人一人話していくことになります。

 この小説を読んで思ったこととして、「夜行」のタイトルの通り、夜を感じさせる情景描写が素晴らしいと思いました。本当にその場所に自分が存在しているかのように感じてしまいます。この小説は、話の最初と最後は主人公の一人称目線で進んでいくのですが、それ以外のところは英会話スクールの仲間の一人称目線で進んでいきます。この構成が百物語のようで、彼らの旅行記の内容も不気味なので、いっそうこの「夜行」というタイトルが重みを持ちます。そのため展開がとても気になって、読み進めてしまいました。十年前に行方不明になってしまった女性はどうなったのか、連作の銅版画とは、それが最後の最後に分かります。最後の章を読み進めていくと、なるほどこういうことだったのかと驚きがありますが、一方で不思議さが残ります。それはものすごく想像力がかき立てられるものでした。

 この小説はとても面白いと思います。旅行という小説の内容ではありがちなものでも、それに謎があったり、謎にまつわる過去の旅行記であったりすると、ミステリー色がとても強くなります。読んでいてその謎はどのように解決されるのか、旅行で何があったのか、それがあるからとても面白いのです。