灰色のシンデレラから分かる男女の価値観の違い

灰色のシンデレラを初めて読んだのは、近年出版された「珠玉の名作アンソロジー6」の、名香智子先生の作品が目に留まったからです。この作品が出来たのは、24年前の事ですが、当時の男女間に於ける心理は現代でも全く変わっていません。

坂巻志麻は、地味で一見群衆の中に居ても誰も気が付かない様な雰囲気の女性ですが、ある日弟が交通事故で多額の賠償金を支払わなければならず、高級クラブの面接に訪れるのです。その場には、泉川森爾という長年の恋人に振られて自暴自棄になっている大金持ちの男性が居り「僕と結婚してくれたら、3000万の賠償金は全て僕が払う。」と約束します。この時点で2人の間には全くの恋愛感情は無く、役所で婚姻届けにサインする時点で「取引」が成立しただけなのです。

彼にとっての結婚は、元彼女の薔子に対しての当て付けに過ぎません。森爾よりも良家の男性と婚約した薔子は、志麻と対照的な雰囲気の女性です。翌朝、泥酔状態だった森爾が隣の枕に志麻の姿が無い事を知ってホッと胸を撫で下ろすシーンは「幾ら何でも、契約結婚だからと言っても酷い!」と思いました。

しかし、薔子の婚約パーティで現れた志麻は化粧とドレスで見違える程美しく、薔子の婚約者迄が見惚れてしまうのです。そして、森爾もその美貌に惚れてしまい、今迄の態度とは打って変わり、極端に紳士的になります。

この作品から言えるのは「女性を外見だけで判断している男性の愚かさ」です。この傾向は昔から変わっていないので、未来もそうなのかと考えると寒気がします。確かに、外見から人を判断する事は特に異性間では当たり前の事なのかも知れませんが、美醜に依って態度をあからさまに変える男性は、人として駄目だと思います。「化粧して綺麗な服を着ると、男の人の態度が変わるのね。」と、驚く志麻に「男って馬鹿だよね。」と、苦笑いの森爾のシーンが一番印象に残りました。男性の女性に対する見方を変える事で、現代の日本社会を改革して行くメッセージが込められていると感じました。