村田沙耶香著「コンビニ人間」

2016年に芥川賞を受賞した村田沙耶香著「コンビニ人間」。長年ミステリー小説や警察小説に固執して読み続けていた私にとって、久しぶりに目から鱗の小説となりました。
また文庫本派の私が、わざわざなぜ単行本を買って読んだのか?書評によれば、村田氏は、作家仲間には、クレイジー沙耶香と呼ばれており、そのクレイジーさを知りたかったという事も一つの理由です。
作家になってからも、コンビニで働いているという村田氏が、まさにこの主人公恵子にダブりました。
恵子は幼い頃から少し違った感覚で人生を見つめ、他人と同じ感覚でない事がいけない事という事を知り、自分の感情を捨て人真似をしていれば、恵子として存在が許されるという事を学びます。
大学生の時に初めてコンビニに出会い、コンビニ店員という動物である事を自覚し、コンビニの中でのみ生き生きとし、人間の本能を感じる事が出来る恵子。
異常とも思えるほど冷徹に人間や社会を見つめ、自分自身を見つめ、コンビニを観察する様子は、決して異常ではないなと読者に妙な納得を感じさせるほどです。
同じコンビニ店員だった白羽に、そんな彼女の異常さを指摘されるのですが、その頃には、読者の私も一体、誰が異常で誰が正常なのか?何が異常で、何が正常なのか?という妙な疑問がふつふつと心に湧いてきて、
正常と異常の境界線がわからなくなるほどでした。コンビニの中での人間の動き、働く様子や、コンビニに並ぶ商品が生き物の様な描写は芸術です。長年コンビニで働いている賜物でしょう。
少し異常な恵子の世界観だと感じて読み始めたこの小説でしたが、読後は、恵子の感覚こそが、現代の人間社会を真っ向から真摯に見つめたストライクであったと妙に爽快感を感じました。