『異類婚姻譚』の奇妙な愉しさ。

第154回芥川賞受賞作で話題になった作品、本谷有希子の『異類婚姻譚』を読みました。

夫婦の顔が次第に似てくるという話で、面白く読めました。過去の芥川賞受賞作品と比較してもなかなか印象深い作品でした。芥川賞には、純文学まっしぐらな作品(最近だと、芸人で有名なピース又吉直樹が書いた『火花』など)と、文学の可能性を広げてくれるような革新的な作品の2つの方向性があると思っているのですが、『異類婚姻譚』はどちらかというと後者に該当すると思います。

劇作家でもある本谷有希子のこれまでの小説は、どちらかというと純文学寄りの、読者の感情に訴えかけてくるような作風だったと思うのですが、今回はその訴えかけが少し控えめになっていて、その分、物語として今までにない新しい方向へ向かうぞという気概のようなものをひしひしと感じました。

序盤・中盤まではわりと普通に話が進んでいくのですが、終盤に奇想天外な結末が待っています。ミステリや推理小説のそれではなく、童話や昔話に似た、「そんなことがこの現代に起こりうるのか?」という感じの終わりなのです。

その結末の奇抜さは、たぶん大衆に受け入れられるようなものではないので、ドラマ化や映画化されることは恐らくないだろうと思わせるほどです。それなのにも関わらず、最後まで読むと独特の清涼感が漂ってきます。

小説を読み終わって清涼感を感じることはあまりなかったので、新感覚でした。そしてその発想の自由さに正直驚きました。

これから本谷有希子、注目していこうと思います。